明後日まで内緒にしておく、作品によせて
二十代前半のころ、学習塾を経営していた。経営とは完全に大げさで田舎町で寺子屋みたいな塾の自営業していた。トラウマになるくらいしんどい時期があった。熾烈な生徒捕獲競争の中、世間知らずの若造は、遠慮のない大人の大手の洗礼を徹底的に受けた。
芝居をしようと学習塾を畳み大阪にでたとき、大手の予備校で講師のアルバイトをした。アルバイトなりに、あの敵だった容赦のない大人の大手側に立った。
今思えば稚拙なところもあるけど、自営業の学習塾に比べるとはるかにシステマティックで随所が徹底していて先生方も誇りを持っていた。業界において無敵に思えた。
その予備校は今はもうない。子供が減った。そして、もっと大手にやられてしまったのだ。
生徒たちの目標や夢をサポートすることを商売とすることに、やりがいと矛盾を感じた。
でもそれを必要とする子供がいたし必要とする世の中があった。
もっとそれをかなえる雰囲気を持った集団によって淘汰された。
この現象において、誰もがそれぞれに持つ立派で尊い良心と責任に基づいて行動していて、誰も悪くないように思えた。先生がたも生徒たちもほどよく精一杯だった。強く弱く。潔癖でずる賢い。自分がまだ若かったこともあって、なおそう感じた。
演劇で掬い取りたい素材。衝動にかられやってみた。
今回は半ば演出との共同作業で作品を作ってみたのは、強すぎる思い入れを緩和させる必要があったからなのかもしれないと思う。
あの日見たあの空間の本質はこの作品の中に確実に息づいています。
明後日まで内緒にしておく、のタイトルみたいに、
あの日悔しくて恥ずかしくて言えなかったことを、綴ります。
南出謙吾
***
らまのだ3かいめ公演
『明後日まで内緒にしておく』
◆あらすじ
山奥にある全寮制の予備校。生徒たちは様々な問題を抱えている。
将来の不安、学業の不振、家族の問題・・・それを支える先生も危なっかしく頼りない。人は人を、どこまで支えられるのだろう。
幼いころ鉄棒を握った確かなあの感触。叱られた記憶。
らまのだ劇作家南出謙吾、北海道戯曲賞優秀賞受賞後初の新作書き下ろし。
◆日時
2016年12月1日(木)~4日(日)
◆劇場
小劇場 楽園
◆スケジュール
12月1日15:00☆/19:30
12月2日15:00/19:30
12月3日15:00/19:30
12月4日13:00/17:00
☆プレビュー
◆脚本
南出謙吾
◆演出
森田あや
◆キャスト
日下部そう
渋谷はるか(文学座)
井上幸太郎
滝寛式(はえぎわ)
斉藤コータ(コメディユニット磯川家)
松本みゆき
木山廉彬
斉藤麻衣子
西井裕美(らまのだ)
◆チケット
前売 ¥3,500
当日 ¥3,800
プレビュー ¥3,000
U25 ¥2,800(要予約。25歳以下。当日受付にて身分証提示。)
◎ご予約→https://www.quartet-online.net/ticket/lamanoda04
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