役者対談⑦塩原俊之さん(アガリスクエンターテイメント)

『天気予報を見ない派』~祐介役~


南出:ほんと、とことんありがとうございました。

森田:もう、次のお稽古も始まってるんだよね。

塩原:そう、もう稽古始まっておりまっすー!

森田:芝居って儚いですね。あんなに一生懸命みんなで作ったのに、あの瞬間が過ぎれば、本当に何もなかったかのような日常で。

塩原:儚いねぇ。終わっちまったって感じですね、「終わってないし」なのに。寂しさは、結構あります。

森田:寂しいと思ってもらえて、嬉しいです。この無情な感じが、芝居のいいところというか、やめられない理由だなって思います。

塩原:他の現場だってそうで、そこではあんまり寂しくならない方なんですが、今回は結構きてます。

南出:芝居の喪失感って、さすがに薄れてきたけど、今回は確かに、ちょっと、なにか違った気がしますね。 本番数日しか関われなかったけど、それでも、僕も感じました。

塩原:濃さが、ね。濃かったからでしょうか。濃厚とんこつって感じ。

森田:二人芝居だったし、たった20分なのに、ずいぶんheavyでしたよね。

塩原:20分とは思えなかった、毎回60分くらいの糖分は使ってた!

森田:実際お客様に見てもらって、どうでしたか?ノンコメディの塩原さん。

塩原:あ、良かったと思います!特に、アガリスクをずっと観て頂いていて、それ以外のところを観たことないって方からは概ね嬉しい感想を沢山頂きました!といってもギャップ補正はあると思いますが。ずっと濃いラーメンばっか食ってると、たまに食べるソーメンでも美味く感じたりするし。

森田:私も一観客として大いに楽しませてもらいました。

塩原:相棒のお陰ですね、一人じゃ辿り着けない場所でした!

森田:二人が一緒にいることで初めて成り立つというか、お互いが相手を推進力に進むというか。全て相手から始まるという、素敵な関係性でしたね。本当に難しい脚本だったと思います。 表向きソーメンなのに、割と中身はトンコツラーメンみたいに濃くて。

塩原:ヘタすると何もドラマが起こらずに終わってしまうので、そこは気を遣いました。 ただ、だからと言って見世物を意識し過ぎるとお互いの中身を揺さぶり合えなくなるし、そこのバランスもとても難しかったです。本当に毎回その場で殴り合ってるみたいでした。一度たりとも同じステージは無かったねって松本みゆきちゃんとよく話してました。相手がみゆきちゃんじゃなかったらできなかったと思います。

森田:南出さん、本番観てどうでしたか?

南出:見えないくらい細い線の上を、危うく歩く俳優が、最高でした。なぜ、戯曲は、この俳優の言動を縛る権利があるんだろうと、思う位。

塩原:その縛られた中でも、やはり、自分はあの瞬間、無限の自由を感じましたけどね! 俺の勝ちー!

南出:心の小宇宙(コスモ)は無限ですもんね。 僕の負けー!

塩原:でも、最後、無限の自由の中で、産み出てきた言葉が「行ってくる」だったんです。だから、祐介はやっぱりあそこは出ていったんだと思います。

南出:木下を汲んで、中途半端にできない、生半可ではない、生活の現実の切実なところで、祐介が、その瞬間とった行動。

塩原:凄い戯曲ですよ、やっぱり。

南出:でも、書いた当時、諸先輩方には、ドラマがない、スケッチだって、言われてました。このひとは、どうしたいんだ、なにが障害なんだ。みたいな。でもそれは脚本には本当に必要なものなのです。だから、ドラマがないという弱点を、演出と俳優が補ってくれたんだと思います。作家がわからない中で、設定の無い中で。

森田:塩原さんと松本さんがこの本を好きでいてくれて、理解しようとしてくれて、やってくれたおかげが本当に大きいと思います。俳優に感謝です。俳優様々。特にこの作品については。

南出:間違いないです、それは。

塩原: 最初に貰った時から、この脚本、いい!やりたい!って思いました。

森田:やっぱり俳優がお客様への架け橋だから、俳優がこんな風に取り組んでくれなかったら、絶対届かないものがたくさんあると思います。

塩原:森田さんの演出のさじ加減も凄い繊細な仕事になりますよね、こういう戯曲は特に。演出とやる俳優によってもの凄く変わるだろうと思います。

森田:この本は本当に俳優を個人として浮き立たせるなと思いました。今回もやっぱり塩原さんの祐介、松本さんの木下っていうのが唯一無二の物語になりましたから。もちろん、どんな戯曲でもそうなのかもしれないけど、特に血の通った本だと思います。

塩原: 戯曲上で描かれてるドラマが少なくても、その分、俳優や演出家に乗せさせてくれる「余白」が沢山残されてるのがいいと思うんです。このとき「ト書き」や「セリフ」は制約でなく、ちゃんと「武器」になるんですね。その武器を使って「余白」を魅せられる脚本だと思います。

南出:ずーっと再演の改稿を繰り返してて、でも、この手触りだけはどうしても残したくて。曖昧で青いままにしてます。

森田:私は好きだったし、かなり満足。見たかった景色以上のものが見れた気がしています。あとは、それがどこまでお客様に伝わっていたのかという、末端の部分ですが、お客様がその瞬間に感じたことを知る術はないから気にしても仕方ないとは思うんです。それでも、見てくれた人の心に何かを届けられていたらいいなとは思いますね。

塩原:お客さんの頭の中にも「余白」が残るからね、あとは埋めて頂いて。

南出:「天気予報」は、ほんと、すごくお客さんのお話を聞きたくなるんです。

塩原:感想、ほんとそれぞれで面白いですよ!

森田:やっぱりお客様ってすごいな、侮れないな、嘘つけないなって思いました。どんな稽古してきたか、とか、どんな状態なのかってのを瞬時に感じて下さるんですよね。セリフ云々ではなく。

塩原:そう!それ思った!お客さん凄い!分かるんですよね!

森田:だから、お客さまに想像の余地とか、持ち帰るものを残すってすごく大事なことだと思います。

塩原:「天気予報を見ない派」って、射程距離がめちゃくちゃ長い作品だと思うんですよね。一点突破でぶつかる人とかはもうとんでもないとこまで飛んでいっちゃう感じがしました。その分スプレー性は低いから、エンターテイメントとして成立させるにはギリッギリのラインをいかないと難しいなとも思いますし。

その点、「終わってないし」は観る人を選ばない、エンターテイメント性の高い作品だなって思ったんです。単純に脚本とか構成とかが「終わってないし」のほうが上手だなって思いました。

南出:単純に仕掛けの量が増えてますからね。でもほんと、自分の文体と仕掛けとの戦いです。

塩原:ただ「ちゃんとした夕暮れ」や「天気予報を見ない派」がドハマリする層には逆に過剰に感じてしまうだろうなぁ、というのも思いました。悪い意味で丁寧過ぎると思う人もいるだろうなぁって。

でも絶対に両立できるラインがあると思います。自分も劇団でものづくりをし続けてきて、最近そこだけは信じられるようになってきました。普通はエンターテイメント性が薄れると共感を生みにくくなりそうじゃないですか?でも違うなって思ったんです。ある一定以上まで狭めると今度は、分からないから、お客さん自身が自分の持っているモノに当てはめ始めるんです。そこの変極点が必ずあるんですよ!それを感じます!だから、恐れずに自分の描きたいことを書く勇気ってのが大事ですよね!って思います。

南出:それが一番自分にとって熾烈な戦い。 でも、苦しい分だけ、それが一番の醍醐味でもあります。書きたいものを書くってのが、実践しているつもりで、どこかそうでないところもあり、自覚できてたり自覚できてなかったり。 でも、根本は書きたいものでなけりゃならんのです。 どんなにテクニカルになっても。 目的と手段を取り違えてはいけない。

塩原:恐れずやっていい!と僕は思います。多くの人が80点をつけてくれる演目も、人によっては150点とかをつけてくれる、そんなバランスの作品作りはちゃんと出来ると思います!今回、オムニバスで並べてみて、南出さんは、世の小劇場で観る作品群の中ではかなーーり描きたいもの書いてるなって思いました。凄く一貫してるなと。こういう脚本にこそ魂は宿ります。それは絶対です。人が一生のウチに語れることなんてせいぜい一つか、多くて二つぐらいだと思うんですけど、それを色んな形で作品に出来るのが演劇であり脚本であり、だと思うんです。

南出:なんか、塩原さんに妙に勇気付けられてるぞ、今日!まー、悩みがないかというと、嘘になります。 でも、今日のそのことばに、乗っかってみようかなあと、思いました。時々たいしたことない技巧でなんとかしてしまったことも、あります。でも、その度合いを、思いきって引き下げて、立ち止まって、考えてみようと。

塩原:あと、「終わってないし」を引き算で編集してるって聞いておお!って思いました。描いたけど戯曲に載ってないシーンが沢山あるんですよね?それ、超いいと思います。 劇団として発表する作品に関しては、そこに森田さんや西井さんの魂を入れるのも一個の手だと思います。特に引き算に関しては、森田さんはらまのだとしてならもう少し引くのかな?と外から観てて思いました。

南出:いいですね!そういう作品、是非やってみたいです。

森田:らまのだを好きでいてくれて、こんなにも応援してくる人が近くにいるって本当にありがたい。嬉しい。心強い。

南出:ありがとうございます。なかなかねぇー、産みの苦労というか、だいたいそーゆーのを産み出せなくて苦しんでる時間が九割九分という現実。だれもがそうなんでしょうが。だから、産まれたときはむちゃくちゃ嬉しいし。でも、産まれなくても筆は進めなきゃいけない。八時間漫喫に、こもって二行というわけにいかないし、やっぱ、ある程度の技術、定石は、必要ですね。その比率をどーにかして引き下げるのを頑張るということで。元気にそこは乗り越えます。

塩原:タイトル『南出』ぐらいの勢いの作品が描けたら、是非呼んでください。

南出:そのタイトルはさすがに劇団が許さないでしょう。でも、本当、ありがとうございます。

塩原:いつかやりたいですね、南出さんの役。 まだまだ自分には荷が重いかもしれませんが、本当、いつか。

塩原:僕は書かない人なんで分からないですが、本当、難産の時ってこの世の終わりみたいになりますよね、、作家、、ただ、ふとした時に、天から降りてきたようなセリフを書いたりするじゃないすか。それが凄いなーって思います。そこに、それがある「必然性」がハンパないセリフ、もう天から降ってきたとしか思えないやつ。それを書いちゃうんだから凄いなって思います。

南出:それはきっと、神の仕業かご褒美だと思ってます。普段無駄みたいに費やした時間と集中力の分、たまに、ご褒美がもらえる。

塩原:そうですね!8時間で2行を越えて、やっと頂けるものかもしれないですもんね。

南出:俳優や演出も似てると思います。そこは。10頑張って10返ってくる世界じゃないので。時給みたいにご褒美はもらえない世界なので。いずれまた、塩原さんが魂を、費やすのに相応しい作品を、送り出します。是非そのときは、またやってください。

塩原:こちらこそ、是非。戦いに行きますよ!全ての人類のために。

南出:そんな、明るい未来を夢見て。

塩原:歩いていこうじゃないか。

森田:またいつか!らまのだで。

塩原:そうだね!てことは、まだ…

南出:終わってないし!

塩原:終わってないし!

森田:終わってないし!ありがとうございました~。

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